詩が燃えてなくなる
詩が燃えてなくなる
目撃者は、
この問いに答えなければならない
黄金色に輝く水面のような朝
丘の上で
膨大なセルロイドが焼かれ
黒い煙のなかで
ちいさなもの
ちいさな虫のような
一群を包む時が
ふちから酸化してゆくとき
詩が燃えて
なくなるということがあるのか
我々は、
この問いに答えなければならない
諳んじていた言葉が
思い出せず
鯨座のミラをさがす夜
長大な神話に脈打つ鼓動の
怖れを知らぬ幼い指先が
日付変更線を超えて
蜃気楼を捉える
燃え尽きた詩の言葉が燃える
世界という世界の
合わせ鏡の奥に映るのは
冷酷な秩序そのもの
鏡のなかの私はここにいる
ちいさく、
次第にかすんでゆくおぼろげな
記憶のようなものとして