ひだまり



冬の室内の白いかべに、ひだまりがあった
母の声をきくことは、
まれになった
おととし
母が死んで間もないころは
しきりと声がした
わたしもそこに母がいるように
話をした、
しばらくの間は、そんな癖がついていた
このごろは、すっかり
その会話も少なくなった
それでも、ときおり
思い出したように
話をする  淋しくはない、
いずれ死んだら皆、そちらへ行くんだ
ひだまりは、
ゆっくりと窓のほうへ
移動していく
じっと見ていても、それは見えない
ただ毎日ながめていると
そうなのだろうと知るだけだ
ひかりも窓から出たがっているのだろう、
それができないことを
そのまえに西日が、となりの建物の陰に
入るせいではないことを 
わたしは知っていた
それら
すべてが、物理的に存在しないとしても、
それが何だというのだ
存在という概念そのものが
思い込みにすぎない
亡きひとや、だれかのために、祈るのは
おそらく、自分のためなんだろう
                             
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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