さしたるわけもなく
この土地も冬のように色褪せた
レンネットユーラシア
トマス燐肥
大いなる蔦屋敷から
広大なシーツを裂きながら
紫キャベツの海にでる
シネマはぼくを満足させない
真珠色の少年を追いかけて
セイレーンの化身
闇の中
鱗粉の砂地の
かすれた風景の
宙返り
円島の森に繁殖してゆく鳴き硝子
行く手には
肌合いの幾何学的加工をくりかえす
晩年のルドンの斑点と舞いあがる胞子を
胸いっぱいに吸い込んで
冷ややかな炎がこぼれている
キュクロープスの花沼(抜粋)
─ 詩集「ソネット <エンディミオン> 」より─