二五
教書のなかに
立ち返るべき基点はなく
荊の巨大な要塞は
実体をもたぬ
闇のイメージの恩恵を受け
光溢れる闇のなかにある
二六
眠気だけが唯一
息を吹く生体となり
寝台に蹲る棗椰子
潤びれた禁忌の矢羽根と
山牛蒡の一房で
浮薄な祈りを偽造する
二七
神聖な語彙を歪めて樹皮を割る
灌木との間合い
仮に抗すれば
希薄な時の椅子から
ずり落ちる主よ
行為のなかにある静寂と
二八
風に煽られ
叢立つ草熱れを掻き分けて
自らに
更に訝しく問いながら
不用意にも
贅言を弄したのは何故なのか
二九
塊根のように生きつづけるもの
滅びゆくもの
贖われた時の意味さえ
知り得ぬまま
雨の日
庭の隅に苗を植えた
三〇
既に咲き残る花の
名前でしかない
兆候はあった
意志と運動が同義である以上
度重なる危機は
土との不合を意味している
クリスマスローズ(抜粋 25-30/108)
─ 詩集「クリスマスローズ」より ─