六七
 
暗澹たる光の翼で羽撃く汝
  歓べ
凱旋者の烙印を
額突き甘んじて受けよ
煉獄の苦痛が
常にここにあり
 
 
   六八
 
地面も未だ
微かに揺らいでいる
真新しい静寂
紆曲する冷やかな反照と
赤錆びた鉄条網に滴る幻影の
たとえば、鳥
 
 
   六九
 
寸断されたロザリオや
異種の花
深い溜池に降り立つ
一羽の百舌
唾棄された土地に彷徨う跣の
悪霊らしき語勢
 
 
   七〇
 
打ち棄てられた塑像の
剥落してゆく
陽光に灼かれた肌えの白として
塗り籠められた対比
崩折れた深紅の偽花を見送る
濁った魂の色
 
 
   七一
 
緩慢な歩みの果てに
避けがたく存在する聳立
花の奇蹟を求めて
離合する予言者たちの
重く病んだ声が
広汎な生の上に漂いはじめる
 
 
   七二
 
光と闇  それら凄絶な
統合の歴史も既に終っている
詩人は複合し
画家は顕現した
それは教理なきオラトリオのための
祭壇画である

 
 
 
 
    クリスマスローズ(抜粋 67-72/108)
    ─ 詩集「クリスマスローズ」より ─
                             
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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