syncopation
@ 口笛
明け方、冷たい水のなかにいる夢を見た
目が覚めて思ったのは
体が冷えていたのだろう、という
現実の、つまらない考えだった
口笛、そうだ それを聴いたとき
音が逃げていった
風に晒されている その声は沈黙に等しく
言葉であって言葉ではない
しかし、やはり言葉であった
A 生贄
無為な言葉の意味を問うのは
愚かなことだ
「精霊とは、
土地や自然の力の総称である」
村には長が必要だった
彼らは鹿おどりを踊った
われわれは死の上に立ち
歩きまわり、生きている
わたしも唯物論者ではない
B 原罪
「われわれは言葉のまえに、
わが身をさし出すことができるか?」
だが、そのような問いは
わたしの性に合わなかった
あるべき世界を
想定しようとするとき (彼は、利用されている)
ほんとうの罪は、人間が
神のようになろうとすること
わたしの口笛
紙屑 塩とビタミンC
わたしは退屈を知っている
つまり真逆のものも (それは、ほんの短い時間である)
赤い実を投げる
死者たちが、それを見て嘲笑う
わたしは井のなかの蛙
世界は田ん圃のなかのどじょう
それは、わたしの父
彼は、天国の父のともだち (世界は勿論、狂っている)
「彼は完全ではない
彼は不在かもしれない」
彼は野菜嫌いで、羊の肉が大好物