夏の夜



現世に降る雪は過去へと遠ざかり
囁きのように乾いてゆくだろう
歩みつづけてきた大地に
夏の夜空の、明るい雲から降ってくる雪

そのための日々、影
そのために、わたしたちは
あらゆる永遠の影となって歩いた
出会い、また、歩いていった

はるか遠くみえた世界の謎
熱情のうちに潰えた詩
ささやかなこたえをもとめて
わたしたちは、坂道で息をはずませた

赤松の林を抜ける長い街道沿いを
くたくたになった足で、歩き通したり、
瀑声が轟くダムの淵で 
突然の雨にぬれ、走ったりした

輝く水面 青く澄んだ闇のなかを
思いは、ふたたび流れてゆく
明るい光がみえる
過ぎ去った日々の、光がみえる

わたしはいま すべてを受け入れ、
身体にさまざまな理由を浸透させる
受け入れねばならぬ静寂と
思念を満たしてゆく

現世に降る雪は過去へと遠ざかり
囁きのように乾いてゆくだろう
歩みつづけてきた大地は
白い夢となって上昇してゆくだろう
                             
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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