花冠
「人間は自然の花冠である」
それは誰の言葉だったか
かつて世界は
神を必要としていたが、
いまはどうだろう
ベルを鳴らし、異教徒たちが歌う
同じ音、
同じ声
大地に降りそそぎ、
叩きつけられた無数の言葉
いまも、
我々の内にあるはずの鼓動と、
旋律の循環
そのとき楽器は
世界と内奥の元素となり、
言葉は、
感覚や世界を共有するための
一つの音楽と
なり得ただろうか
人間という花冠の、
寸断された闇の理由を求めて
悲嘆とともに
繰り返し派生する
萌芽
萎びれ、朽ち果てていく
過剰なバラ
我々の眼前にある、
来歴の
永遠に閉ざされたカーテン
堆く
積み上げられた知識を
少しずつ
取り崩しながら
散逸した記憶をかき集めても、
繕うすべはなく
もっとほかに
言うべきことがあったのだろうかと
夢幻のなかにあるものの
意味や
文脈を掘り起こそうと
奔走しても、
何も見つかりはしないだろう
もはや絆も
ぬくもりも失った我々が
いま、我々が唯一すべきは
不確かな過去と未来の、
鏡のまえで
潔く言葉を捨て去ること
闇の奥へと向かうまなざしが、
一筋の道を
見い出すまで
心から信じて祈ること
そのほかに
人間に何ができるというのだろう
やがて、闇が
澱み
長い雨が上がり
葉むらに虹色の雫が滴るとき
輝く光のなかで
一つの声を聞くために
誰が捧げるのか、
何を