茨
散り散りになった意味の
混沌の渦中に散り散り、赤い波動がくる
予感と、欺瞞の
時が満ち、うねる
胎動を視座とさだめ、その名を唱えつづける
叫ぶが、その声は届かない
軛を引き抜かれ、世界は黙りを決め込む
激しくダンスをする鉱物質の叫びと
有機的ノイズ
眼差しのない音楽
言語のように垂れ下がる多彩
干涸びた生に罹る微かな翳
痛覚は証し 教えてください
さし示してください
創造と時の摂理、ことわり
挫かれることのない誓い
震える翼へとつづく信仰を以て
ふたたび鐘声の際立ち、空漠に帰する瞬間を
永劫に引き寄せることを試みる
湿った土
むせかえるような
草いきれに喘ぐ雑食性の匂いがする
きつい香り
霧が立ち込めている
踏み込めば、たゆたう
潮音の果ての、対岸にて
泣いてばかりいる無限梯子で
ゲッセマネと呟いて
今も混濁している私たちの言葉
休息が要求され
柔らかな胚珠のように
記憶の片隅で、今も微かに聞こえる声がある
敬虔なものの名前
聞け、流転、向こうまで
ただ一度限りの
立ち帰るべき日々への
今日の、ひとときの眠り
不確かな思いの切れぎれに、閃く光り
やがて日は昇り、
何も見えなくなるだろう