ともかくも放物線に辿りついた
澄んだ瞳の貴婦人のさした
日傘みたいな果実樹のある
まぎれもないせかいで
アンモナイトコラージュ
彫像たちの息吹に
特殊加工される
古生代 林檎 臓器 燭台
背景などどうでもよい
きみの瞼はとざされたまま
手のひらにおかれた一握りの
指の隙間から零れてゆくのを
あおぐものなどなくともかまわぬ
鬼火にやにさがり
身をくねらせ
駈けずりまわることはない
日はゆっくりとまわり
いつも背後にある
弥勒菩薩のごとく
半跏思惟の姿勢を保ち
雲は山頂をすれすれにかすめ流れて
闇の中から白球がせまってくるように
氷海
夢と現実という言葉のレトリックと脅迫
その時ぼくはまだ
きみに出会っていなかった
時代は意外にも表面的にすすんでゆくのだし
鼓膜の奥にあるもやに包まれた停車場では
ごうごうと鳴る
風の音がかくも恐ろしいのは
そこに全く作為が無いからだろうか
音には素朴な官能も宿っているように
触覚は
素足になって
灯りを消した
せかいを消した



放物線(抜粋)
─ 詩集「ユリウス暦の農閑期に」より─
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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