もういけないかもしれないと
それを目撃することが
ねがいであり
ささえであり
あきらめであるなら
陽の沈むのをまって
冷えたテラスの夕餉に
ビールをすこし呑み
敬虔な気分で床に就こう
すべてが名前のない
眠りのように絶えたとき
何であろうと
こみあげる祈りを
沈められなかったとすれば
神秘に対して
信仰をもたない
一瞬の風景の触発は
きみを支配する
考えもつかぬ頃があった
無数のイメージとして

時代の行き着いた神話に
身をゆだねられぬ
背教者として
考えつく事といえば
カラスと鳩の
退屈な比喩のお伽噺
あるいは
磁気の力と法則は
赤紫の光の結晶に作用するなどと
表現のなかに埋没しかけていたし
大地に椅子を置くという行為さえ
透明に過ぎた

言語は恐怖さえも忘却していたから
おしゃべりのためだけに
唇も声帯も
存在しつづけなければならない



背教のアテナ(抜粋)
─ 詩集「ユリウス暦の農閑期に」より─
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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